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どうすればよいの?税務調査と受忍義務
国税の税務調査
税務署の税務調査を受けられた事業者の方は「あ〜これが税務調査か」と実感されたことでしょう。
でもこの税務調査にも色々あるのです。

マルサの女ではありませんが、@強制調査の通称マルサの税務調査。以下強制力はないが
A大規模法人対象の国税局調査課の税務調査
B国税局主導の資料調査課の税務調査
C税務署主導の中での特別調査
D税務署主導の一般税務調査
E源泉所得税中心の源泉単独調査
Fその他、印紙税・酒税・・・・の税務調査です。

今まで経験された税務調査は、上記Dの税務署主導の一般税務調査ではないでしょうか。
その内容は、後述いたしますが、何故税務調査は必要か?
課税の公平を担保する為でしょう。この税務調査が存在しなければ、脱税が横行し隣が脱税すれば、皆で渡れば怖くない現象も発生しそうです。
国税局・各税務署の税務調査を行う権利は所得税法第234条、法人税法第153条で定められています。納税者は、税務調査に応じる義務(通称税務調査の受忍義務)が課せられています。
ここでは、この受忍義務の範囲が非常に不明確なのが現状です。その事も後述したいと思います。
現在では、課税に対する異議申し立てから裁判も多発しています。租税は国民の義務です。
そして正しい申告・自主納税が基本です。

税務調査の色々

@ 強制力を持った査察税務調査(通称マルサの査察事案)

この税務調査を経験された事業者の方は 少ないと言うより皆無に近いと思います。
私も国税の調査を約20年近く経験してきましたが、マルサ事案を経験した事はありません。
且つマルサ事案の対象者を事前に知った経験も全くありません。
時々、新聞で公表されて知るのが現状です。

前職の経験からマルサの部屋へ行く時は入り口で所属の署名・氏名を大きな声で言って入れと指導された事を思い出します。
黙って入っていくと机上の書類を全査察官が裏返しにするそうです。
そしてキツイお叱りを受けるそうです。
この職場の職員は 皆人柄は良いのですが、何と厳しい環境下での勤務か本当に同情します。
幸い 開業以来この税務調査を受けた経験はありませんのでこの辺で終わります。

 追記 この査察税務調査は 裁判所の令状下で行われますので 憶測では絶対実施されません。100%の租税逸脱の裏づけを取った上での調査です。査察事案は 本当に国民の国税への課税の公平信頼を背負った仕事(言葉は悪いが見せつけ的要素もあります)ですから失敗は許されないのが現状です。一生 お会いしたくない職場の方々です。

A 国税局の調査課の税務調査 (通称・・調査課事案)

これは 資本金が○○億円以上の超大規模法人を対象とした税務調査です。
これも私は一回も経験がありません。
上場企業となられたら、この担当部署からの税務調査を経験されることでしょう。
これも時々新聞記事として(脱税では無く)国外の関連会社との取引で税務修正申告1億円追徴課税・・・こんな記事を見ますがおそらくこの部署での税務調査事案と思います。

B 国税局主導の税務調査 (通称・・料調事案)

国税局の職員と各税務署の職員とで行う税務調査です。
課税の権限は税務署長にありますが、主導は国税局職員が行います。
税務署の各資料及び国税局の資料等から調査先が決定されます。
マルサのような強制力はありませんが、大口脱税・調査困難事案を主に行っています。
また調査期間も概ね長期となる場合が多く感じられます。マルサのような100%の裏づけが無くても調査対象となるケースも含まれます。
一番多いのは投書・内部告発の資料の確認ではないでしょうか。
業種的には パチンコ・不動産業・風俗業・飲食・・・現金商売等に多いようです。
私もこの様な事案は経験しましたが「調査に来るにはそれなりの理由がある。」と実感しました。

C 税務署主導の特別税務調査 (通称・・特調事案)

税務署内でも 調査困難事案や大口不正が想定される事案に対する税務調査です。
税務署の規模によって担当人数も差がありますが、税務署内でも隠密に行動しています。
各税務資料から投書・内部告発等の資料も全てチェックしています。
またチームを組んで仕事をしますし調査の事前連絡は一切行っていません。
一部、税務署版のマルサ?とも言えそうです。
この調査は、日数も投下して調査しますので短期的に税務調査が終了する事は少ないようです。

昔を思い出すと、三瀬峠を夜何回も越えて仕事に行った記憶が甦ります。
調査先は 深夜の閉店だからです。
西鉄電車はありません。帰って来たら朝の5時・・当然 背広は着ていません。ジーパンにTシャツです。現金商売業への内偵等は日常的に行っています。
社長の出社時間位は事前に確認しています。この様な資料の蓄積から年間 一チームで10件程度の調査を行っています。

ある日突然に、○○税務署の法人税○課の○○です。法人税の税務調査に伺いました。
廻りに数人の職員が居り支店等へも一斉に調査があったらこのケースの税務調査の可能性が大きいと思われます。

D 税務署主導の一般税務調査

もし税務調査の経験がある場合は、概ねこのケースと思われます。
昔は3年に1回とか言われていましたが、最近は若干伸びているようです。
新規開業から3〜4年目には必ずと言って良いように企業の実態確認の為実施されていました。
その後大きな問題が無ければ数年に一度程度実施されているのが現状のようです。

この税務調査は、申告資料等からの異常数値の確認等が主な内容ですから概ね税務担当者から事前連絡があり税理士を交えた日程調整の上実施されます。

脱税はしていないのに何で調査に来るか!と一言申し立てたいでしょうが「課税の公平確保の為の受忍義務があります」ご了承願います。

E 源泉所得税の単独税務調査 (通称・・丸源調査)

公益法人とか、従業員が多数いる企業とか支店のある企業への源泉所得税に特化した税務調査です。 通常の民間企業では実施されるケースは少ないようです。
幼稚園・学校とかの法人税が課せられていない事業所への税務調査と言ってよいようです。
有限会社・株式会社等の場合は、一般税務調査と同時に実施されます。

F その他 印紙税調査・酒税調査・・・

このケースでは、印紙税の課税漏れ文書が発見され且つその数量も多額と想定された場合に実施されます。1枚2枚の印紙漏れでは実施されていないようです。
しかし、印紙税の漏れでも正当印紙額の3倍(過怠税印紙税法第20条)となる場合もありますのでご注意下さい。

昔は、銀行のように多量に領収書等を発行している事業所や多量に契約書を作成する事業所が対象でしたが、最近は一般事業所への印紙税の調査も実施されているようです。

参考追記
一部では 憲法35条(捜査・押収の制限)や第72回(昭和49年)国会請願採択税務運営方針の「事前通知」から突然の税務調査に応じる必要は無いとする意見もあります。私自身は、基本的には、納税者の了承無くしての調査は出来ないと考えています。また、納税者も「正当な理由」が無く税務調査を拒否することは出ないと考えています。この場合の「正当な理由」がまたまた論争が出そうですが社会通念での判断が1番のようです。

税務調査の受忍義務とは?

税務調査は 受忍義務が課せられています。では、どこまでの受忍義務(無条件での受忍義務)かは非常に不明確です。税務調査の方法については国税通則法等にも明文化されていません。各調査担当者の判断と調査責任者の判断が現実のようです。マルサ事案(強制調査)は脱税の疑惑を前提とした犯罪捜査ですから100%の受忍義務が発生しそうですが通常の任意調査の場合は・・・例えば次のような場合でも調査を受ける受忍義務があるのでしょうか?

@ 葬儀の日・・100%ありませんでしょう。
A 奥様一人の自宅
B 約束がある場合
C 体調が悪い場合
D 他人がいる事務所では
E 小売業で開店している店舗では
F 会社の金庫の中は
G 社長の机の中・事務員の手提げバック
H 事務所のキャビネット 
I 社長の机上のパソコン(事務員同様)
J 愛人?の自宅は ・・・
様々なケースが想定されます。
調査に臨場した場合、通常 税務職員は、身分証明書を提示します。
ここで貴社の法人税調査に来た旨を説明し社長・責任者への面接を申し出ます。ここでも最近ニセ税務職員がいるので
K 身分証明書をコピーは出来るか。
L 税務署へ確認することが出来るか。
税務調査でも事前連絡の場合は、上記のような問題は少ないでしょうが事前連絡なしの場合は大変心配となります。
法律の専門家ではありませんが、そもそも憲法33条(逮捕・令状)の場合以外は憲法35条(捜査・押収)で令状が無ければ応じる必要は無いと言う意見もあります。
第72国会請願採択により、調査理由の開示も必要との意見もあるようです。(私見です)

突然の税務調査は受入られません。(これが基本です)
最近は 殺人事件とか多発していますが、この様なケースとは異なります。
国民の基本的義務の納税ですが、今 即時に押収しなければならないケースは稀と思います。
万一その事業所が脱税を行っていても、その経過の痕跡は消す事が出来ません。
丹念に調査を実施すれば問題は解決するからです。
私も開業10年目を迎えていますが、一度だけ連絡なしの税務調査を受けました。
受けたと言うより突然課税当局の方々が勝手に会社を訪問されていました。
社長さんから電話連絡があり調査責任者と電話で話し「直ぐ会社へ行くので待て」と伝えました。
先方も約40分間世間話?で待っていたようです。このケースでも現実的に調査入り口からお互いに摩擦が生じました。横着ですが「税務調査が下手だな〜」と思いました。
突然連絡無く調査する様な事案では無かったからです。「旨く税理士を使えば」と思いました。

私の持論は、あくまで任意調査ですから「申告の基本帳簿書類も所有者の承諾なく触れる事が出来ない」。です。
よって、上記の@は基よりJまでは受忍義務は無いと思います。
だからと言って帳簿も提示しない。一切の説明もしない。は次元が違うと思います。「主張しましょう!」「説明しましょう!」です。
ハッキリと今日は「事前の予定があるので対応出来ない」と言いましょう。
きっと課税当局は「どんな重要な予定ですか?何時までですか?」と聞いてくるでしょうが。
言いたくなければ「内容は極秘と言って下さい(にっこりと)」これで良いのです。
何も調査を妨害する必要はありません。調査には積極的に協力しましょう。でも、現実にそのような場面では「どうすればよいか」と悩まれるでしょうが、答えは「関与税理士へ直ぐ電話される事」です。
後は、自分の気持ちを関与税理士に伝える事でしょう。そして万一関与税理士に話していない事項がありましたらお伝え下さい。

権利と義務・・誤った権利は多大な義務となります。正当な権利は 義務を激減させます。積極的な義務履行は 権利を保障します。
なお、Kについてはコピーをする権利は無い。L確認する権利はあると思います。

止め処もなく書いて見ましたが参考になったでしょうか。

最後に、国税当局は貴事業所を本当によく見ています。・・実感です。
次に「無予告での税務調査」と「事前連絡での税務調査」を書いてみます。

無予告での税務調査(想定)

このケースの場合は、飲食業等の現金にての売上業種に実施されるケースが多く見られます。また、内部資料等より売上等を除外していると思われた場合にも実施されるケースがあります。だからと言って100%の裏があるかは疑問です。あくまで確認として行われます。

ある朝 9時頃 自宅玄関に 背広を着た2名の人が突然訪問(調査官)

調査官・・○○税務署の法人課税部門の○○と言います。チョットお時間を下さい。
問1・・ さーどうされますか?

調査官・・株式会社○○の代表者○○さんですか?(確認)身分証明書を見せて、本日は株式会社○○の法人税調査に伺いました。御協力下さい。玄関では何ですからチョットいいですか?
問2・・ さーどうしますか?

自宅の応接室へ案内した場合では
調査官・・お店へも署員が行っていますので、店の責任者に調査に協力するよう社長さんから電話して頂けませんか。 問3・・ さーどうされますか。

電話にて連絡した場合として
調査官・・ここ一週間の売上げの状況を確認したいのですが。売上げ伝票等はどこにありますか。

自宅にある場合(代表者立ちあがって別室へ行こうとする)
調査官・・保管状況を確認したいので一緒に行きます。と立ち上がる。
問4・・ さーどうされますか?

応じた場合・・売上げ伝票を確認
調査官・・この売上の現金はどこに保管されていますか?売上金を確認させてください。金庫ですか。では開けて下さい。
問5・・ さーどうされますか?

調査官・・現金出納帳は 何日まで記帳されていますか。見せて下さい。
問6・・ さーどうされますか?

・・・・次から次へ。

もうお気づきと思いますが 調査官の一方的なペースで調査は進んでいます。現状は この様に進むケースが多いと思います。何故なら「要求を断ったらと不安が頭を横切り対応が解からない」からではないでしょうか。

問1〜6 全てに正解は無いと思います。
しかし問い1 の場合に次のように対応したらどうなるでしょうか?

問1 ・・税務調査と突然訪問されても困ります。税理士に電話しますのでチョット待ってくださいと言って税理士へ携帯電話から電話を行い状況を説明。その携帯電話を調査官へ渡す。

税理士と調査官が話すでしょう。そして、対応が決まるでしょう。
この時、本日の予定等があり協力したいが出来ない事情がある場合は税理士に十分説明して下さい。
税理士が来るまでは(ニセ調査官では無いと判断した場合)応接室に案内するか玄関で待ってもらって下さい。
応接室へ案内しても以後の問い3〜については・・「どうして良いか解からない」と説明し税理士が来るまで待ってと言って下さい。

きっと両方の話を聞き税理士が対応する事となるでしょう。

万一税理士が不在の場合でも携帯電話で調査官と税理士が話す事が出来ますので、必ず税理士へ先ずは連絡して下さい。

この方法が「最善の対応」と思います。

事前連絡での税務調査(想定)

通常の場合は、調査官から税理士事務所へ株式会社○○の法人税調査に○月○日の○○頃訪問したいが日程の予定をとの電話依頼があり税理士は会社の代表者へその旨を伝え日程調整を行います。

問1・・この場合 調査予定日に先約があった場合
答え  税理士に遠慮なく申し出下さい。他の日程の調整を行います。

問2・・何を準備したら良いか?
税理士が必要と言う書類の準備をお願いします。書庫等の整理を行い、書類がスムーズに確認出来る様御協力下さい。

問3・・お茶は出していいの?コーヒーは?昼食は?
通常の来客と同様に対応して下さい。お茶・コーヒーは出して結構です。しかし昼食は出しても食べられません。

問4・・ 調査は何日もかかるの?
ケース的に異なります。通常は3日程度ですが問題が売上金の漏れ等になると売上全体の確認となり金の流れ等の確認(銀行調査)また得意先への確認が行われ信用問題も発生しますし長期化することとなります。

売上については絶対に漏れが無い様記帳する事が最も大事です。

問5・・ 調査は何時から何時まで行われるの?
夜明けから日没までは行える事となっていますが現状ではAM10:00〜PM4:00が一般的です。

・ 調査期間中は 必ず同席しなければいけないの?
当然、日常業務が発生しますので退席しても結構です。
この場合○○頃帰ります。若しくは帰りが遅くなりますので質問等は税理士へお伝え下さい。
後日返答します。・・とお伝え下さい。

・ 調査官の指摘事項(修正申告)に納得出来ない場合
十分意見は言って下さい。ただ事前に税理士へもご相談下さい。
両者の意見を聞き、結論へのアドバイスが必要です。一方的感情はお互いに気まずくなります。

・ 修正申告を提出したら税金は何時払うの?
申告・納付期限は、当初の提出期限が原則です。修正申告時点での即納となります。また修正申告に対する加算税(過少申告加算税)や納付日までの利息が別途加算されます。

当然ですが、法人県民税・事業税・法人市民税も増額します。
なお個人事業者は、その他に健康保険料も増額となります。

・・ 調査は何年周期で行われるの?
様々です。連続年度で実施されるケースは少ないですが、3年毎にある事業所から10年間無いケースもあります。
この判断は課税当局の一方的判断です。
一般的に調査の対象となっている事業所は概ね所得が多いところが多い現象です。
調査は受けたくないでしょうが反面課税当局が注目する事業所とも言えます。
債務超過の事業所への税務調査は少ないようです。(課税当局も金にならないからでしょう)

まとめ
税理士として税務調査は避けたいものです。
最善の注意を行って決算申告を行っていますが、調査時は「何か大きな間違いが無いか」と不安になります。
現職時代から通算するとこの調査の現場に約30年居ることになります。
納税者と課税当局の両者の立場から実感する事は、納税者は正確記帳を行い十分説明する事です。
この事が、課税当局に協力する第一番の様に思います。

最後に「税理士を旨く活用して下さい」


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